「………あれは何かしら」



――…なんとも愛らしい笑顔を見せて言う彼女。



しかしその背後にはどす黒いオーラが漂っていた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



事の発端は、三時間前。



何故だかびしょ濡れになって帰ってきたアレンに“偶然”鉢合わせし、レイは悲鳴をあげて震える彼を引っ張って行った。



………別に、待ってたワケじゃないもの。



そう言う精帝様に勇者側近は苦笑したとか。



そうしてすぐに暖炉の前まで大好きな彼氏を連れてきたレイ様。


彼女は既に濡れてしまったマケドニスのタオルを椅子にかけてかわかし、ふかふかソファーに無理矢理アレンを座らせたのだった。



最初は仕事があるだの言っていたアレンも、風邪をひかれたら余計困るんです、と言うマケドニスが放ったこの最後の切札には勝てなかった。





「レイ様といたくないんですか?」







 ――…嵌めやがった。



あいつ、わざとレイの前であんなこと言いやがって。




もちろん拒否なんか出来る筈がなく、アレンはその場に留まることにしたのだ。