「ぅあ~…寒ぃ」
雪がちらほら舞う曇天の空の下。
アレンはマケドニスを従え身震いしながら、そんな小言を溢していた。
二人は今視察から帰って来たばかり。
門をくぐり城への道を真っ直ぐに進んでいる。
「こんなに寒いのに噴水は凍っていませんね…」
主人と同じく寒さに震える側近は、そう言って先に見えた水しぶきを指差した。
城と門の一本道のど真ん中に位置する噴水は、今日も休みなく水を噴き上げている。
「…噴水って凍るのか?」
「…え、凍らないんですか?」
「いや、知らないけど…」
「…俺も知らないです」
そんな話をしているうちに、その噴水の場所まで辿り着いた。
あと半分も歩かなければいけない。
いつも思うが、城って無駄に広い。
「…あ、淵についてる水は凍ってますよ」
何気なく噴水を見ていたマケドニスが、アレンに手招きしてそこを指差した。
確かにそこは凍っている。
薄く出来た氷を見下ろしたアレンは、「ほんとだ」と呟くと触れてみる。


