アレンは観念したのか、ため息をつくと形のいい唇を開いた。
「………………て」
「え?」
小さな彼の声が聞き取れなくて、私は思わず聞き返す。
アレンは露骨に嫌な顔して私を睨んだ。
…………なによ。
抗議しようと私が喋りかけた瞬間、アレンは言った。
「…………賠償金、寄越せだって」
……………………。
バイショウキン?
「お前何か壊したの」
エニスがびっくりしてずり落ちた眼鏡を上げながら言う。
めずらし~…、じゃなくて。
「違う。何も壊してない」
あれ、なんかアレン無表情になっちゃった。
嫌そうな顔すらしないのね。
「…今回は、先生が名誉を返せとかそんなんで勝手に依頼したみたい」
表情が無のまま言うアレン。
……って、先生?


