こうやって私が泣いても、一流は困るだけなのに……さっきも悲しい気持ちにはならないって決めたのに。


「ごめん……ちょっと顔洗って来る」


勢いは弱まったがまだ流れている涙を拭きながら、洗面所に行こうとした時だった。


「泣かないで、蕾」


フッ…と柔らかい微笑みを浮かべた一流が、私の右頬に左手を添えた。


そのまま親指で涙を拭われる。


「オレは蕾と出会えて良かったと思ってるよ?昨日初めて会ったのにこんなに気にかけて貰えるなんて、嬉しい事なんだよオレにとっては」


「一…流……」


「だから泣かないで」