なぜなら私は先程、怒ってる梓灯より何百倍も怖いものを見てしまったからだ。


見た目は普通の人間なのに誰にも見えなくって、人の腕が当たる事無くすり抜ける体を持つ、自称“死んでる”男の子。


つまり……立派な“幽霊”を。


「ヒィィィィ……ッ!!なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないのよ………!!」


先程の恐怖感が、1時間授業を受けてお昼休みになった今でも、全然抜けない!!


頭のてっぺんから足の爪先までガタガタ震えが止まらず、お弁当も一口も食べられないでそのまま。


「蕾、いい?幽霊なんて、この世にいないのよ!」