その梓灯の腕が、ブンッと男の子に当たりそうになった。


「あっ……」


つい“危ない”と言おうとしたが、言葉は途中で止まる。


なぜなら――――……梓灯の腕はそのままスカッと、男の子の体をまるで何も無いかの様にすり抜けたからだ。


「ハッ………?」


あまりにも衝撃的過ぎる光景に、本気で頭の動きがオール停止する私。


男の子は梓灯の腕がすり抜けた左脇腹ら辺を悲しそうに見た後、その表情のまま私に視線を移した。


「こういう事です………今のオレは誰にも触れないし、誰にも見えないんですよ。アナタだけは別みたいですがね」