カランカラ-ン…
扉を開けると中からガヤガヤの騒がしい声が聞こえた。
やや多めにあるテーブルの奥にはステージがあり、毎晩そこでショーが行われる予定だった。しかし、いざ奥に行ってみると、
ジャズピアノに合わせて歌を歌っている緋音がいた。
露出の多い赤いドレスからは白く細い腕がみえている。栗色の髪の毛を頭の上で綺麗に盛っていた。
ステージにいる緋音はとても高校生とは思えないほどであった。
「あか…ね。」
朔の声に反応した勝は元気いっぱいの子供のようにはしゃぎながらいった。
「緋音ちゃんきれいだな〜!!!いやー、俺、今緋音ちゃんにだきつきたいくらいだわ〜」
そんな勝の声も聞こえなかったのか、朔は緋音を見て、歌を聞いていた。
緋音に見とれている二人の姿に気付いた辻が二人の元へ歩み寄ってきた。
「どうだ?緋音は。なかなかいいだろ?」
自慢げに、しかしいやらしい笑顔ではなく純粋な笑顔で言ってきた。
勝は辻の言葉に気付かず、緋音をあきず見ていた。
朔の方も少し間が空いたくらいだった。
「あ、はい。でも、緋音を外に出すのは…ちょっと…」
それは誰だって思ったことだろう。
緋音が組織に狙われていることは緋音以外のみんなはしっている。
そんな狙われているはずの緋音を公の場にだすだなんて。それも、たとえこの小さなBARのステージだろうが危険なことだ。
「俺達もやめといた方がいいって言ってたんだけどな…緋音のやつがやりたいやりたいって聞かなかったんだ」
ステージに立って歌っている緋音の姿は本当に輝いていた。
だからこそ、誰も何も言えなくなっていたのだ。
「…Thank you.」
発音の良い声でお礼を言った緋音は、朔と勝に気が付き駆け寄ってきた。
「朔!!勝!!どうだった?あたしの歌ッ!!」
楽しそうに話す緋音。
「ちょーよかったよ!!!やっぱ、緋音ちゃん最高だね!!!」
「だろだろん?」
ふざけながら言う緋音の表情はとてもよかった。
朔は緋音のその表情をみながら頭をかいてゆっくり、つぶやくようにいった。
「よかった…よ。」
「え?朔、なに?」
「何か言ったよな?朔!!なんて言ったんだ??」
朔は
うるさい
といって急いで2階にある自分の部屋に去っていった。
2階はリビングを始め、他に5部屋ある。
緋音の部屋、凛子の部屋、大門の部屋、辻の部屋、そしてなぜか勝と朔の部屋。
朔と勝は同じ部屋で過ごしている。
「あれは…てれたな。」
顎を触り、にやけながら勝は言った。
「え?!朔が?!やったーーー!!」
緋音もなぜか喜んでいた。
2階に上がった朔も口元を手で押さえながらうつむいていた。
そして、ベッドに横になり目を閉じて考えた。