本当に事故だったのだろうか。
朔は常に疑問を抱いていた。
2年前のあの日、それは蒸し暑い日だった。
家族としてだんだんと仲良くなってきたとき
緋音が動物園に行きたいといい始めた。
緋音の父も朔の母ものりきになっていたが朔は行かなかった。
というのも、朔は熱を出して3日間くらい寝込んでいたのだ。
その動物園の帰り道、大型トラックと3人が乗っていた軽自動車が衝突し、緋音は運良く助かったが両親二人が亡くなった。
即死だった。
その事故にも不審な点はいくつかあった。
「さーく!!!」
凛子だった。
普段は他人に話しかけない人なのに珍しく朔に話しかけていた。
「凛子さん。」
「浮かない顔だね」
そういうと、凛子は朔にさっき買ったばっかであろう、夏だというのに熱々の缶コーヒーを手渡した。
「どこにうってんすか、この缶コーヒー」
と、朔も疑問に思い聞いてみたが答えは返ってこなかった。
「なにがあったの?」
少し飲んだあとに聞かれた。
朔はもう少しコーヒーをのんでから答えた
。
「わからないんすよ」
わからない。
緋音が何を考えているのか。
なぜ緋音が記憶を失わなければならなかったのか。
なぜ緋音があの日動物園に行きたいだなんていい始めたのか。
朔は全てがわかっているはずでわからなかった。
「あー…だと思った。」
凛子は自分が飲んでいた熱々の缶コーヒーをそばにあったデスクの上にひとまずおいた。
「緋音のことでしょ?」
すべてを見抜いていた凛子に対し、こくんと頷いた朔。
朔の顔は連日の捜査に対して疲れが溜まっているようだった。
「ははッ…凛子さんには隠せませんね。」
あったりまえでしょ〜
凛子は笑いながら朔の肩を叩いた。
「痛い…」
「あっ、ごめん!!!」
「いいっすけど…」
痛そうな顔をする朔をみて、凛子はホットしたように笑った。
「あんたってほんとおもしろいわね!!!…もう少し素直になったら?」
「…え?素直って、俺は素直ですよ」
「ったく、緋音に対してよ!!!」
「…」
黙り込んだ朔に対して凛子は追い討ちをかけるように言った。
「昔のこと、私は良く知らないけどさ、あんた気にしすぎじゃない?緋音のせいってわけじゃないでしょ?少しは許してあげな…」
「あなたになにがわかるんですか!!!」
いきなりでた朔の大声に凛子は体をビクッとさせ、驚いた。
「あ、すいません…」
「あ、いいの、全然。私こそごめんなさい。」
いつも強気の凛子が相手に対し弱気なのは初めてだった。
しかも、年下相手に、だ。
「じゃー、私先BARに戻ってるわね。」
逃げて行くように去っていつた凛子をみて、朔はただただため息をつくだけだった。