赤いランプを光らせながら白黒の車がはしっていった。

その中にはもちろん朔たちが乗っている。

黄色いテープが貼られたその先に鑑識や刑事たちがうじゃうじゃいた。

もちろん、野次馬もいたわけで、その野次馬たちを避けながら朔たちは入っていった。

「お疲れ様ですッ」

通りすがる刑事たちにとって特別刑事課の存在は敬いきれない程だ。
その理由として特別刑事課には課長の小野寺が直々に選んだ人しか来れないのと、警視総監が設けた特別なところだからだ。

「課長、おはようございます」

「おう、ご苦労だったな。」

「課長~!!!お久しぶりです!!!俺、捜査がんばります!!!」

勝は緋音の警護につきっきりだった為捜査自体が久しぶりだ。だから今回のやまには気合が入っている。

が、しかし、勝はまもなく逃げたくなるだろう。

「それにしても、私たちは大丈夫だけど、勝は大丈夫なの?」

凛子さんの声に振り返った勝はやはり顔色が悪くなった。
なぜなら、そこにまた赤い死体があったからだ。


「わ、わわわ…血いいぃぃぃ…」

白目になる直前で勝は首をいきなり横に降った。

「で、でも!!!俺はしますよ!!!緋音ちゃんのためにも頑張ります!!!」

「緋音のためって…そういや緋音の警護は誰が行ったんだ?」

「それは、あいつに頼んでます!!!」

勝のあいつとは誰なのか。
朔はすぐわかった。

「あいつってあいつか?!」

「え?おう、もちろんだろ!!!」

「あいつって…」

朔が頭を抱えるのも仕方がない。
あいつと呼ばれるその男は、、、

「朔ーーーーッ!!!」

「うわッ!!!」

朔にいきなり抱きついてきたのはなぜか緋音だった。

「おっまえ!!!なんでいるんだよ!!!」

「えー、だって朔のとこ行きたいって言ったらさー、大門がつれてきてくれたんだもん」

「やっぱり、あいつ…おい、大門ー!!!」

そう呼ばれていきなり茂みからでてきた大男、大門。
大門は昔ヤクザの下っ端として働いていた時失敗をしてしまって殺されそうになった所を朔と勝に助けられたことがある。
以来、大門は朔や勝の忠実なる下部として任されたことは全てをしっかりやり遂げるやつだ。
もちろん、警護を依頼したのも、元ヤクザなだけあって緋音を少しは守れると思ったからだ。

「ちっす!!!兄貴、久しぶりっす!!!」

大門はBARでも、アルバイトとして働いている。

「大門、なんで緋音ちゃんを連れてきたんだ?…というよりどうやってこの中に入ってこれたんだよ」

勝の質問はもっともだ。
警察内部の人間でない以前に、ヤクザの格好をした男をなぜいれたのか、そこに警察への不信感が高まる。

「いやー、緋音ちゃんが…」

「朔の妹です、っていったら普通に入れてくれたよ!!!」

「おまえなあ…何やってんだ!!!お前がもしここに来る途中で誰かに襲われたとしてみろ!!!お前は危険な目にあうんだぞ!!!それがわかってて来たのか?!」

朔が大声で叫んだのに対し、周りの刑事たちも驚いた。

「朔ー、それはちょっといいすぎじゃー…」

「うるさい、だまってろ!!!」

勝の仲裁もはじき飛ばした。

「なによ、あたしだって勝や朔にお弁当持ってきてあげただけだもん!!!サイッテー!!!朔なんかね、お兄ちゃんらしくないんだよ!!!」

そういうと、緋音は勝と凛子だけに弁当を渡して走っていってしまった。
その後ろを大門が急いで追いかけていった。


「朔…いいすぎだろ。緋音ちゃんだって自分が狙われていること、知らないのにあんなこと言われたらなにがなんだか分からないと思うぞ」

勝の言う通り、緋音は自分が狙われていることは全く知らない。
むしろ、誰に狙われているのか。
それはある組織にだ。
その組織こそ、この前BARを襲撃してきた武藤がいた組織だ。

緋音の記憶…

緋音は3年前からの記憶を失っている。
なぜだかは分からない。

父も死んだ今となっては、誰も緋音のルーツを知らない。
緋音の母親も、誰なのかわからないのだ。
調べても死んだとしか情報が入ってこない。

だが、朔たち、特別刑事課だけは緋音の母はまだ死んでいないと思っている。
むしろ、組織と緋音が絡んでいることが明確になっている以上、緋音の血のつながった兄弟として、兄の八神新司に聞きたいのだが、八神新司も、全くと言っていいほど連絡が取れない。

「勝、あなたの気持ちもわかるけど…緋音がここにくることで組織に緋音を捕まえるチャンスが与えることになるのよ」

「でも、それじゃあ緋音ちゃんは外に出られないじゃないですか!!!」

「仕方ないんだ!!!」

朔が思いつめた何かを吹っ飛ばす勢いで言った。

「緋音を外に出すことでもし組織に捕まったら、あいつはどうなるんだ?無事に帰ってくるっていう保証はあるのか?!」

「そりゃ、ない、けど…」

「そんなもんなんだよ。」

組織がいつやってくるかわからないこの状況で一分一秒油断は許されない朔にとって緋音が外をどこそこ歩き回っていると聞くと心配でしょうがないのだ。
これは朔に限った話ではない。
勝だって、凛子だって、小野寺もだ。
辻もマスターとして、大門もアルバイトとして、緋音のためにやれることなら全てやる精神で頑張ってくれてる。
だからこそ、緋音は無事で今もいられているわけだ。

「朔ー」

「はい!!!なんですか?」

小野寺に呼ばれた朔は急いで小野寺の元へと走っていった。

「朔、お前なー、もう少し緋音ちゃんに、対して優しくしたらどうだ?」

「充分やさしくしていますよ。」

朔がそっけなく返すと小野寺はため息をつきながら聞いた。

「お前が緋音ちゃんに優しくない理由はなんだ。あれか?あの事件のことをまだ引きずっているのか?」

かすかに朔の表情が変わった。

「あの事件は確かに緋音ちゃんも絡んでいた。だが、事故だっただろ、仕方のない事故だったんだ。」