私は幼いころから暴力を受けていた。
母や父から。
おねえちゃんはそんな私をいつでも守ってくれていた。
毎日毎日傷だらけになりながら私を守ってくれていた。
時には私は部屋に隠れてしまいおねえちゃんだけ酷い目にあった日もあったのだった。

リーン…リーン…
鈴虫の鳴き声がやけに大きく聞こえる夏の夜。
「おねえちゃん…ゴメンナサイ…。」
ある日 おねえちゃんは顔に大きな傷をおった。
父が会社をリストラされ私たちにいつものように暴力をふるってきた。
父はいつもより強く殴ってきたり蹴ってきたりした。
おねえちゃんは私を部屋に隠してくれた。そのかわりおねえちゃんだけが酷い目にあった。
怒り狂っている父は台所から包丁を持ち出してきておねえちゃんの顔を切りつけたのだ。
さすがに母もヤバイと思ったのか、父をとめて部屋に戻らせた。
私はそんな騒ぎも知らず部屋に隠れてしまっていたのだ。
「大丈夫。ちょっと痛いだけだよ?」
おねえちゃんは笑顔で言う。
「ホント…ごめんなさい。」

「平気だよ!!私が亜癒を守りたいんだから!!」

「おねえちゃん…」
私は泣きそうになったが今泣いたら父が「うるさい!!」と怒って
また殴りかかってきたりするかもしれないと思い泣くのはやめた。
「じゃ、おやすみ。」
おねえちゃんは私の頭を撫で、笑顔を私に向けながら自分の部屋に戻った。
私は自分のベットに倒れこみ顔までタオルケットをかけた。
涙のたまった目を思いきり擦り深い眠りについていった…



ピチュン…チュンチュン…
「ん…」
私は重い瞼を開きベットのはしにおいてある時計を見た。
時計の針はちょうど7時のところにあった。
「…!!やっば!!亞璃ちゃん来ちゃう!!」
私はベットから飛び起き階下に走り降りた。階下はシーンとしていて私の足音だけが響いている。
ここまでシーンとしているのもめずらしいものだ。
いつもなら父や母のいびきや歯軋りがうるさいのに。