side:理玖-riku-
いつもと同じ放課後の帰り道。
校門を出るとすぐに見える、真っ直ぐ
のびた緑の木々が並ぶ一本道。
春の終わりの新緑の匂いが清々しいほど、
体中に広がった。
古き春が終わり、新しき夏を俺は特に何も思わず、無念にも歓迎していた。
となりの彼女と共に。
「ねぇ、理玖。今年の夏休みはどんななの?」
エメラルドグリーンに輝くくりっと丸い瞳。柔らかに風にそよぐ茶髪。振り向いた時に視線が向く白く透き通った肌。
(おいおい、修飾語。)
まあ、俺にはそれだけで十分伝わるのだが…。
「まだ決めてない。だけど、風景画とか写生がいいかなって思ってる。」
そう答えると、美碧は見るからにぱぁっと
目を輝かせて笑顔になった。美碧は想像して描く絵よりも自然を描く絵が好きなのだ。
「なら、また一緒に描きに行こ!
私、理玖が絵を描いてるところ好きだもの!」
「………。」
俺は美碧のこれに弱い…。この笑顔と正直さに毎度調子が狂わされるのだ。
(あー…やばい。ニヤける…やばい。)
つまり俺はどうしようもなく嬉しいという事だ。俺はニヤけた顔を見られまいと少し早歩きで美碧の前を歩いていった。
それに気付くか気付くまいか、美碧は小走りで再び隣に並んだ。
(俺も少し言ってやろうかな。)
恥ずかしい気持ちを抑えながら、俺はひょっと頭を下げて美碧の顔を真正面から覗き込んだ。
美碧はいきなりの事で驚いたのか、目を丸くしてこちらを見つめている。
「…俺もお前の笑った顔がお気に入りだ。バーカ。」
バーカは恥ずかしさの末端がはみ出たものだ。我ながらなんと愚かな逃げ方だろう…
しかし、美碧は湯気がでそうなほど顔を真っ赤に染めていた。
「ううう、うっせ。バカ!」
あーもう何でもかんでも可愛いなお前は。
(腹立つ…可愛い…腹立つ…。)
(これが俺の彼女なんだ。)
そう思うたびにじんわりと胸に染み込むように嬉しさが広がった。
…同時にぽつぽつと消えることのない悔しさが鋭く心をさした。
いつもと同じ放課後の帰り道。
校門を出るとすぐに見える、真っ直ぐ
のびた緑の木々が並ぶ一本道。
春の終わりの新緑の匂いが清々しいほど、
体中に広がった。
古き春が終わり、新しき夏を俺は特に何も思わず、無念にも歓迎していた。
となりの彼女と共に。
「ねぇ、理玖。今年の夏休みはどんななの?」
エメラルドグリーンに輝くくりっと丸い瞳。柔らかに風にそよぐ茶髪。振り向いた時に視線が向く白く透き通った肌。
(おいおい、修飾語。)
まあ、俺にはそれだけで十分伝わるのだが…。
「まだ決めてない。だけど、風景画とか写生がいいかなって思ってる。」
そう答えると、美碧は見るからにぱぁっと
目を輝かせて笑顔になった。美碧は想像して描く絵よりも自然を描く絵が好きなのだ。
「なら、また一緒に描きに行こ!
私、理玖が絵を描いてるところ好きだもの!」
「………。」
俺は美碧のこれに弱い…。この笑顔と正直さに毎度調子が狂わされるのだ。
(あー…やばい。ニヤける…やばい。)
つまり俺はどうしようもなく嬉しいという事だ。俺はニヤけた顔を見られまいと少し早歩きで美碧の前を歩いていった。
それに気付くか気付くまいか、美碧は小走りで再び隣に並んだ。
(俺も少し言ってやろうかな。)
恥ずかしい気持ちを抑えながら、俺はひょっと頭を下げて美碧の顔を真正面から覗き込んだ。
美碧はいきなりの事で驚いたのか、目を丸くしてこちらを見つめている。
「…俺もお前の笑った顔がお気に入りだ。バーカ。」
バーカは恥ずかしさの末端がはみ出たものだ。我ながらなんと愚かな逃げ方だろう…
しかし、美碧は湯気がでそうなほど顔を真っ赤に染めていた。
「ううう、うっせ。バカ!」
あーもう何でもかんでも可愛いなお前は。
(腹立つ…可愛い…腹立つ…。)
(これが俺の彼女なんだ。)
そう思うたびにじんわりと胸に染み込むように嬉しさが広がった。
…同時にぽつぽつと消えることのない悔しさが鋭く心をさした。



