軽い冗談にクスリとも反応しない。
 まあとにかく、ご丁寧に細部まで教えてくれたから理解できそうだ。頭の中で平仮名を漢字に変換する。
 かんじゃ→間者
 時代劇で聞いたことのある単語だ。確かOO7の職業だったはず。カタカナ変換すると
 間者→スパイ
 そうだスパイだ。あ~~スッキリした。ん?スパイっ!?
 「違う違いますって!そんなんじゃありません!」
 「けど妙な着物着てるし、そのあわてようがより一層怪しいんだよね。まあ、とりあえず来て」
 全国の女子高生が愛用している制服が妙というのなら、古き良き京都の町並みに似合うその袴姿も十分妙ですよ.............と思いながら腕を掴まれ引っ張られる。膝が地面に擦れて痛みが走るってあれ、地面?
 周りを見渡せばコンクリートの景色が一変、和風テイストの庭になっていた。すぐそこには木造建築の大きい家が建って、板張りの廊下がずっと続いている。
 夢?幻?でも掴まれた腕は痛い。ということは現実?
 頭が疑問符で埋め尽くされる中、僅かな隙間で大掛かりな嫌がらせドッキリの可能性を考察してみた。カネモチジャーがお金で映画村にでも運んで役者さんを買収。そんでもって
 「土方さーーーん」
 いつの間にかたどり着いてた一室。障子がいきよいよく開かれスパーンっと気持ちのいいくらいの音を響かせる。うん、いい開けっぷりだ。
 そして
 「総司!声かけてから開けろと何度いやぁ分かる!」
 まあ当然だろう苦情が大音量で返される。
 「あれ~~そんなこと言われましたっけ?」
 「てめぇ......そこに直れ。今日という今日は、ん?そいつは誰だ?」