あれから幾らか時間がたち、今はみんなで近所のご年配方宜しくお茶を啜っていた。
 「それにしてもよぉ、....何でま....た過去になんて..............(ゴクン)来ちまったんだ?未来人ってのは走るなり飛ぶなりして時間を行き来できるのか?」
 いつの間に持参していた菓子をぽりぽり食べながら聞いてくる。どうでもいいが食べるか喋るかどちらかにしてほしい。
 「そんな強引で無茶苦茶..........(ゴク)なことができるの、筋肉馬鹿の新八っつぁんぐらいだって」
 「平助、てめぇそりゃあどういうこった!」
 「まあまあまあ、(ズズズ)何でタイムスリップ、えっと時間を飛び越えちゃったのか私が聞きたいですよ..........(パリッ)」
 人のこと言えない..........
 何はともあれ、中には異世界にふっ飛ばされるなんてパターンもあるが、そんなファンタジックなSF体験を経験する人間はそうそういない。                                   ・・・
 あくまで二次元の現象でしかないのだった。
 「とにかく、帰る場所はあっても帰れないと言うことだね」
 「はい....果てしなく遠い地平線の先にもございません...」
 住所を言えない子猫と未来の住所を言える私、どっちがランクとして高いか。言える分だけ私か?どちらにせよ犬のお巡りさんもお手上げだ。
 さっきまで輝いていた太陽はいつの間消え、しとしとと雨が降り出してきた。あまりにも心情の変化と一致していて、誰かが演出を施しているんじゃないかと再びセット説を説きたくなる。
 「じゃあ此処で過ごせばいい」
 「なにいってるんだよ近藤さん、部外者をおいそれと入れる訳にいかねぇだろ」
 ケー小をまんま実写化したシーンが繰り広げる中、さっきまで黙りこくっていた赤ポニ、いや原田さんが突然立ったかと思うと頭に手を乗せてきた。
 「小姓ていう名目で居させりゃあいいじゃねえか。洗濯やら食事やらさせればいいしな」
 ごつごつとした手が幼い子をあやすように叩く。立て続けに常識はずれなイベントが起こったせいで生まれたいろんな強張りが、柔らかい振動と温もりがでわじわと身体中に染み渡り溶けていく気がした。
 「だが...........」
 「いいじゃん、俺もいい加減しょっぱい総司の飯食うのはやだし」
 「味も分からない舌なんて必要ないよね平助?僕が斬ってあげるよ」
 「副長は最近些か無理をし過ぎかと」
 「よく言った斎藤!それになによりむさ苦しい男集団に一輪の花が咲いて...」
 「とにかく、そういうことだ。どうだい近藤さん」
 最初から依存はないのか、躊躇いもなく頷く。
 「歳、皆もこうして言ってるんだ。構わないだろ。」
 「....................仕方ねぇな」
 最後の押しが効いたのか、ようやく頷いた。
 なんだかあまりの一方的な展開に申し訳なさがこみ上げてくる。