ただいま5人の生徒からの呪縛を振りほどき帰ろうと
「おい、勝手に動くんじゃねえよ」
 ...させてもらえず、非常に困っている。
 ぞろぞろと試着室から出てきてチャッともとのポジションに戻ってポーズを決める。
 一時巻き戻し。
 宙に浮いた手を叩いたらいいのか、いやいや今更と横に振ればいいのか分からずさ迷う。
 その後箱はどうなったのかはご想像にお任せしよう。ヒントは数多の人形劇に出没する黒装束の人。
 話を戻して紹介しよう。
 あいつらは私と同じ1年で入学当初から何かと突っかかってくる奴らだ。
 以前、何故私に絡んでくるのかと聞いことがあるけど
 「決まってるだろ、お前(あんた)が気にくわないからだ(よ)!」
 という実に簡潔で分かりやすく無茶苦茶な返答が返ってきた。
 まあ、こんな理由で動く行いといったらイジメ1つしかない。
 こいつらは1学年を牛耳るグループで、全員有名財閥の坊ちゃん嬢ちゃん。庶民の生活に触れろという親の御達しでこんな平凡の県立高校に入学したらしい。
 だが日常生活として根ずいてしまった絢爛豪華な感性は抜けきるはずもなく、毎日の格好はまさにピカピカの他でもない。
 普段身に着けている装飾類や傲慢さは最高一級品。それに押されてか、周りの生徒は巻き込まれまいと痛めつけられる私を見て見ぬふりで過ごす。
 そんなドラマみたいな話がと、笑い飛ばしたくなるが悲しいことながら真実。
 おまけにたちの悪いことに、大人の前では自慢の傲慢さをおくびにも出さない。
 明らかなイジメの現場であるこの状況だって教師の目からは
 「まあ、今日も挨拶運動?毎日朝早くから大変ねえ」
 「いえ、僕たちができることはこれくらいですから」
 ニコッと真っ白な歯なんか見せちゃって、どうせ自分で歯磨きなんかしたことないんだろ。美容の秘訣はお金と美容師だと、とある外人女優が言っていたが全くその通りだ。