正直驚いた。私の言うことなんか聞く耳持たなかったにもかかわらず、ポロリとでた素っ気ない感想を聞き逃さずあまつさえ念の確認までしてきたんだから。
 まるで自分のことを誉める言葉にすかさず飛びつく小1だ。
 だからこそ戸惑った。
 「えっ?え、まあ、変にひねらずに率直で分かりやすい句だと思いますけど。どんな景色を見たのか。どんな風に感じたのか」
 俳句の良し悪しなんてはっきり言って分からない。教科書に載ってる俳句だって、文章の説明書きがなければチンプンカンプンだ。
 それに比べれば土方さんのは分かりやすい。変に回りくどい言い方をせず、素直に俳句にしている。
 俳句の達人たちからしてみればそんなのは素人の感想だと言うだろう。切れ字が何々の何チャラを表しているとか、比喩的に表現する事で何やらが深く感じられるとか、それらしいことを述べるに決まってる。
 けど、俳句なんて中学生の夏休みの宿題止まりの、そして本人を目にしている私だからこそ世間の皆さんに言える。
 彼の俳句はピカソやゴッホのように卓越した芸術家は理解されないとか格好いいものじゃない。ただ真っ直ぐな彼の心の写し身であるため、知識とか理屈とかじゃ分からない。ひねってばらすんじゃない、ただ純粋に詠んで感じるものなんだよ、きっと。