自分に呆れてため息をつき、お弁当箱を机の上に出したときだった。
「……愛空」
「あ、榎本くん……」
顔を上げると、なんだか少しいつもより不機嫌そうな表情の榎本くんが立っていた。
いくら鈍感な私でも、わかるほど不機嫌オーラを放っている。
「え、榎本くん……?」
「行くで」
「えっ!?」
私の机に置いてあったお弁当箱を持ち、私の腕を引いて教室を出た。
なんだかいつもより腕を掴む力が強い気がする。
「あ、あの榎本くん、腕痛い……っ」
私が訴えると、榎本くんは我に返ったようにハッとして私の腕を解放した。
「ごめん」
たった一言、そう言って私のお弁当箱を返すと早歩きで去っていく。
「榎本くんっ!」
私が呼んでも振り返ろうとしない。
榎本くん、どうしたんだろう……。
少し……ほんの少しだけ、心配だ。