《愁サイド》
今まで俺が見てきた女はみんな、甘い言葉をかければ簡単にオトせた。
だからコイツも……って思ったんやけど。
キスしよう、って言ったらアイツは怒った。
今まで俺にキスしようと言われて怒った女はおらんかったのに。
俺は絶対にコイツをオトしてみせる。
絶対俺に夢中にさせたるからな。
抱きしめた愛空から優しくていい匂いがする。
やっぱり……他の言い寄ってくる女とは違うんや。
「ほな、帰るで!」
「あ、え、榎本くん……っ」
俺は愛空を腕から解放して、愛空の手を引いて歩き出す。
「愛空の家こっち?」
「は、はい……」
愛空は俺の言葉で混乱しているように見える。
まだ頭の整理できてないんやろうな。
「て、てか、榎本くん……私の家まで送って、自分の家にちゃんと帰れますか?」
「………あ」
たしかに、言われてみればそうや。
俺、今朝学校に行くのも迷ったんやんな……。
このへんに引っ越してきたばっかやから全然地形とかわからん。



