姿を現した満月のまだ淡い輝きが、鬱蒼と佇む森を妖しく照らす――。
月と太陽のせめぎ合い――夕方と夜の狭間――。
境界線の曖昧な時間帯――。
程なくして、彼は部室を出てゆき、サユリがいつもの様に見送った――。
ルナでもなく、ミナ、繭、マリネ――ましてや一番傍にいた茜をも彼は「拒絶」し、「得体の知れない」サユリを求め、縋り、目的を果たした――。
そんなに時間は費やさなかった――。
サユリで、彼の魂は安堵した――他の「天使」達が物足りない訳ではなく、あの状況で彼の蠢く念を、すっぽりと解きほぐす天使が、サユリに過ぎなかっただけ――。
設定、念の種類が異なれば、彼は違う天使を選択するのだろう――。
サユリは仕掛けた――。
キスして――。
最後かもしれないから――。
ここで――。
抱いて――。
などと、躰をくねらせ、唇で、指で、色仕掛けを施す――。
「この件を切り抜けられたら、膝枕でもしてもらおうか――」
彼は、サユリの挑発に、「男の夢」で返し、去った――。
「あらら、本気だったのに――」



