特別付帯条項――。
男子入学生が、彼独りと決定的になった時、それは彼と学院側で秘密裏に結ばれた――。
猶予は一学期中――それまでにもし彼が、「女」だらけの学院環境に馴染めず、悩み苦しみ、道が塞がれた場合、理事長と親交のある、そのスタイリッシュな建物と、過剰とも思える施設に、個性的な教師陣を揃え、ここ数年で頭角を現した高校への無条件編入を許可するという、甘い罠が染みた紙に彼はサイン、捺印をしていた――。
しかも、編入して卒業までの年間授業料の全額免除という蜜が、滴る紙に――。
彼にとって「損」な取り引きではない――。
故に特別な思惑もなく、すんなりと彼は応じた――。
理事長の「粋な計らい」と思って――。
否定派の工作か――。
彼と理事長の間で交わした「密約」――。
何故、副会長がその事を――。
副会長は否定派――事の優位さを示す様に彼を見下げる琴音の視線を浴び、下唇を噛み、後悔する――。
「いい頃合いです――彼には向こうへ編入して頂いた方が幸せになれるのではないでしょうか――」
琴音が凄み、言った――。



