マルメロ


「私は、くんの方がしっくりくるかな――」


ミナの端麗さを、僅かに可愛らしい方向に振った繭の出で立ち――この、1年秋桜組で彼よりも身長が高く、「同系」のミナと早くも良好な関係を構築し、秋桜組の「ヒエラルキー競争」を一歩リードしている――。


「皆で決めた事なら、オレはそれで構わないよ――」


「テルでも、テルくんでも、好きな様に呼んでくれ――」


仄かに芽生えた嬉しさを押し留め、「ぶった」口調で言った――。



「だってさ――委員長っ――」


繭が前列の席の方に、綺麗な弧を描く首筋を向ける――。



「ちょっと繭っ、いきなり私に振らないでよ――」


茜が顔を赤らめ、困惑気味な瞳で繭と、繭越しにミナと彼を見た――。


「だって、委員長が言い出しっぺだよ――テルくんが早くクラスに馴染める様に、呼び方決めようって――」


「よよ、余計な事まで言わなくていいのっ――それと、ずっと注意してるけど、委員長は止めなさいっ――」


懸命に動揺を隠し、繭を諭す茜――。


「んもぅ、あかねっちのいけずぅ――」


「あかねっちは、どっちなの――」



「えっ――」