マルメロ


「おでこ、大丈夫――」


「えっ、あぁ、何ともないわ――」


遠い過去の記憶を手繰り寄せる様に、ルナはおでこを擦る――。



「今更だけど――ごめん――」


「ううん、私の方こそ――」


ぎこちない謝罪と返答――。



特に彼にとっては、待望の対面だが、次の言葉が出ない――「状況」と「環境」は最高のものが提示されている――。


彼の言う、自然な出逢いが叶ったというのに上手く活かせていない自身に、やるせなさが滲む――。



「座ろうか――」


目の前に据え付けられた木製のベンチを示し、捻り出した言葉――。



「うん――」


容姿に似合わぬ受け答えでルナは、制服の胸ポケットからハンカチを取り出し、座面の上に敷き、背筋を伸ばして座った――。


人、二人分の間隔を空けて彼もベンチに腰掛ける――。





「やっと話せて良かった――」


「気を失ったって聞いていたから、ずっと心配してた――」


彼が切り出し、ルナが気遣う――。



「男が気絶するって、情けないよ――」


「私が倒れた方が良かった――」


意外にも、ルナが仕掛ける――。