『小古間君は何部?』

『俺は陸上部。えっと・・「舞香」えっ?』 

『蜷名(けんな)舞香。舞香って呼んでね。』

『勝利』

勝利・・・。今までお母さんにも何千回と呼ばれてきたし、廉にだって何百回と呼ばれてる。友達にだって。父さんにも姉ちゃんに・・は呼ばれてない。
けどいつもと違う。感覚が違う。なんかくすぐったい。

『・・・勝利?』

『ん?あ、舞香は何部?』

『あたしはソフトテニス!陸部の隣。なのに全然気付かなかったね。』

あはは、って笑うきみが愛おしくて仕方がなかった。

思い出していると自然と涙がでてきた。

「勝利くん・・・。あ!!!」

手術室のドアが開いた。

「先生!!舞香は!?舞香は・・!!」

「大丈夫。手術は成功したよ。問題ない」

僕と廉とあやみは安心して顔を見合わせた。

「今日はもう目を覚まさないと思うし、面会時間ももうすぐ終わるからとりあえ
 ず帰ってまた明日おいで?」

「「「はい!」」」

三人で笑いながら明日の待ち合わせ時間や場所を確認しながら帰った。

でも僕らの願いは儚く散った。