まさか、広野くんがシャーペンと消しゴムを貸してくれるなんて。
「ありがとう……」
ようやく出たありがとうは、消え入りそうなほど小さく、さらに恥ずかしさで顔が真っ赤になっていました。
ああ、せっかく貸してくれたのに。こんなんじゃ、嫌な気分にさせてしまう…
恐る恐る顔を上げると、広野くんはニカッと微笑んで、
「うん」
と言うと、自分の席に戻っていきました。
広野くんが、私に微笑んでくれた…
普段はあまり見せない笑顔を、こんな間近で見られるなんて。
夢かもしれない。そう思って、ほっぺをつねってみましたが、つねった部分はヒリヒリと痛みました。
夢じゃないんだ。
思わず、笑みが零れます。


