ヒトメボレ。





自分の荷物を取りに教室へ戻る。

窓際の自分の席にあるカバンをひっつかんで、ひとつ、ため息がでた。




「真比呂さん……」



いるはずのない彼女の席を見る。


いつも、あの席で本を読んでいるんだよな。


あの席で授業を受けて、あの席から外の景色を眺めて……



真比呂さんは、どんな世界を見ているんだろう。





オレは無意識に真比呂さんの席に近づいて、ゆっくりと彼女の席に腰を下ろした。



「ふっ…何やってんだオレ」




彼女に近づきたいあまりに、彼女の席にこっそり座るなんて。


しかも、それでなんとなく近づけた気がしてるなんて。



「オレってこんな変態だったっけ」



ボソッと呟いて、オレ彼女の席から自分の席を見た。