「おまえ、ちょっと口開いてみろ」
「んん?」
はい? な、なんで今ここで、口を開かなきゃいけないの? こんないたいけな少女を捕まえて、政宗さん、一体何をする気?
目を見開き、政宗さんの顔を凝視する。
「なあ。おまえ今、変なコト考えただろ?」
変なコト考えてたのは、政宗さん、あなたの方でしょ!
目だけでそう訴えると、政宗さんは呆れたようにため息をついた。
「唇のはしから血が滲んでるんだよ。どこか切ったな。見せてみろ」
「んん……」
ああ……。そういうことでしたか。早合点した上に、自分で自分のことを“いたいけな少女”なんて。恥ずかしすぎる……。
バツが悪い私は、痛むのを我慢して口をパカっと開けてみた。
う~ん、なんとも恥ずかしい姿。醜態を晒してるというか、見られてはいけないところを見られてる……そんな気分にさえなってきて、思わず目を閉じた。
「あぁ、ここか。下唇の裏側。多分歯が当たって切れたんだろう。傷自体は大したことなさそうだな」
そう言うと政宗さんは、何を思ったのか私の唇に自分の唇を押し当てチュッと何かを吸い取り拭い始めた。



