絶対王子は、ご機嫌ななめ


「智之さん、すみませんでした。ここまで来ておいて弱気になっちゃうなんて、私ってやっぱり子供ですね」

自嘲気味に笑ってみせると、智之さんは私の頭をコツンと小突いた。

「謝るのは僕にじゃないでしょ? それに、柚子ちゃんはもう子供じゃないよ。素敵な恋をしてる立派な大人。だから頑張って告白しておいで」

智之さんの言葉にコクンと頷くと、車がゆっくりと動き出す。

「今日は僕も一日付き合うから。政宗さんには、いつ会えるかわからないしね」

「貴重なお休みを使わせてしまってすみません。このお礼は……」

今度ランチでも……と言おうとして、その唇を人差し指で押さえられた。

「お礼なんていらない。こうしてドライブできてるだけで十分だよ。それにそんなこと軽々しく言わないの。今は政宗さんのことだけ考えて」

なんて言ったそばから、智之さんは私の唇に触れた指先に自分の唇をチュッと押し当てた。

「間接キッス」

「もう!」

「元気、出た?」

智之さんは、真っ直ぐ前を向いたまま問いかける。

「はい、バッチリ」

智之さんの優しい気持ちに触れて、やっぱり私はまだまだ子供なんだと思い知らされる。

恋愛だけじゃない。仕事や私生活、色んな意味で成長しなきゃいけない時。

「智之さん、私、頑張りますね」

自分自身に発破をかけると、私もまっすぐ前を見つめた。