引っ越しが決まったのはつい最近のことだった。
ソノは、なにも知らなかった。

それは、ハヤシの一言だった。

「ソノ、二日後、越すことになった。準備しとけよ。」

ソノは、今住んでいるこの家が好きだった。
生まれてから14年も住んでいるのだから、
いきなり離れたくはなかった。

しかし、ソノの考える余地もなく、
引っ越しは進んだ。
家の中のものが、だんだんと無くなっていく..........
ソノは、その様子を黙って見ていた。

引っ越し先は、ソノの母、サクラの実家。
しかし、サクラはもう、この世にはいない。
ソノが産まれた直後、息絶えた。

ソノは、サクラの写真に駆け寄り、眺めた。

「お母さん。この家から離れることになっちゃった。
でも、お母さんもちゃんと、連れてくよ。」

そう言うとソノは、写真を布で包んで、カバンに入れた。

刻々と引っ越しの準備は終わり、ハヤシは休憩をしていた。