その十数分後、張りが完全に治まって会場に行くと、マリアーノさんが近づいて来た。

「体調は如何ですか?」と当たり障りの無い言葉だが、妙に棘がある感じ。

「えぇ。…ご心配をおかけしました。」とこっちも当たり障りの無い言葉。マリアーノさんはクロードに

「ねぇ?何故なの?クロードらしくないわ。身ごもらせる、だなんて。」…言いたい事は分かった。『要は騙されてるんじゃ?』って事。…本人いるのに。ねぇ。

「…自分が望んでしたことだ。只それだけに過ぎない。それに言葉が過ぎる。レイカは自分がエスコートしてこの場所に連れてきた時点で王族と同等の権力を持ってる。…周知の事実の筈だが、分からないのか?」言外にクロードはあたしを侮辱しているのか、と言ってる。それとこのままだと公爵令嬢の立場でも、言って良い事と悪い事が有るとも。

「…ッ!!何故!!私の方が長く見ていたのに振り向いて…」言葉をクロードが切って

「それ以上にしろ。公爵の顔に泥を塗る真似は寄せ。」その言葉に気付きマリアーノさんは回りの冷たい目に晒されていた事に気付いた。

居たたまれなくなったのか、マリアーノさんは会場から出て行った。