根本的なものから合わないらしい。


「……浅緋くん。」


変な空気の中、小さく隣の彼の名前を呼べば、何故か瑠衣くんと夏見くんまでこちを見る。


「ん?どうした、火蓮。」


「……今日、病院だよね。」


浅緋くんは目を瞬かせてから、思い出したように苦笑した。


「今日は俺も瑠衣も車出せないから、病院はまた今度にしようか。」


大学生というのも、中々忙しいのか。
先日もそう言って延期になった受診。私は今日は簡単には引き下がらなかった。


だって、先生は言った。
『記憶喪失について、気になる事があるからまたおいで。』って。


……そう言われれば、行くしかない。


「別に、一人でも行けるよ。」


「それはダメ。……言ったろ?一人で出歩くのは危険だって。」


「でも…、何が危険なの?」


有無を言わさぬ浅緋くんにさらに問えば、彼は困ったように押し黙る。
さっきとは違った沈黙がリビングを包み、しまったと反省する。


別に、こんな空気にしたかったわけじゃない。


瑠衣くんは相変わらずの掴めない笑顔を浮かべ、夏見くんは何処か苦しげに視線を逸らし、未来ちゃんも悲しそうに浅緋くんを見ている。


……ただ、月野くんだけが面倒くさげにため息を吐いた。


「病院だけなら、俺が送ってけば問題ないんじゃねぇの。」


「月野、あなたまさかバイクで行く気?」


未来ちゃんの避難めいた言葉に、月野くんがギロリと姉である彼女を睨んだ。


「は?それの何が問題なわけ?つーか、いつまで監禁じみたマネしてんだよ。此奴の事、また壊して……」


「月野!!!!」


突然の浅緋くんの怒鳴り声。
一気にリビング全体の気温が下がった気がした。