「…お、おはよう…。」


私は小さく言って、いつもの定位置である月野くんの隣に座った。反対の隣には浅緋くんが座る。


その向かい側には瑠衣くん、瑠衣くんの両隣りにそれぞれ未来ちゃんと夏見くんが座っている。


この光景は何と無く、本当に何と無くだけど安心する。初めて座る筈のこの席も、私は無意識に当然のように座った。


月野くんは苦手だけど、彼の隣は安心するから不思議だ。


「…………なに?」


あまりに月野くんを見つめていたからか、彼は眉を潜めて冷たく言った。慌てて首を振って目線を逸らす。


私が前に目を向ければ、何やらニコニコと瑠衣くんがこちらを見つめていた。
そういえば、彼はいつも笑っている気がする。


……不思議だ。


「あー、可愛ええなぁ。火蓮は。」


「………何言ってんですか変態野郎。」


ニコニコしながら言った瑠衣くんの言葉を夏見くんは即座に切った。


瑠衣くんと未来ちゃんは浅緋くんと同じ年で、夏見くんは私と同じ19歳。そして月野くんが18歳らしい。


私を含め、6人は同じ中学と高校時代を共にした友人同士らしく、とくに浅緋くんと私は幼稚園からの幼なじみという。


………未だに、分からない。


彼らと私の関係性が、掴めないから戸惑ってしまう。そもそも、この人達は私の記憶喪失なんて忘れているかのように馴れ馴れしい。


「ええやーん。火蓮が可愛ええのはホンマの事なんやしー。夏見んもゆうてみ?」


「黙れ。キモい呼び方しないで下さい鳥肌立ちます。」


「照れてんの?な、つ、み、ん。」


「…………潰すぞクソ野郎。」


夏見くんが鋭い眼差しで瑠衣くんを射抜く。一瞬、ピリッとした空気が走ったのは、ヘラヘラした笑顔を瑠衣くんが崩さなかったから。


それにまた夏見くんの眉がギュッと寄った。瑠衣くんと夏見くんは、いつもこんな感じだ。