浅緋くんは、本名を斎藤 浅緋 Saitou Asahi といって20歳の大学生らしい。らしい、というのは本人がそう言っているだけであって、記憶の無い私が真実を確かめる術はないからだ。


といっても、経歴に何の興味も無かった私はただ、浅緋くんの異常な程の過保護さに戸惑っていた。


この3日間、私は彼と暮らすマンションから出ていない。


元々、浅緋くんと2人で住んでいたらしく、確かに女物の私物や絵を描くための材料が置いてある。


浅緋くんの優しさは、もしかしたら前の私にとって当たり前だったのかもしれない。そう思いつつあるこの頃、リビングへ行くとまだ慣れない光景に立ち止まった。


「おー。おはようさん、火蓮。」


「お早う御座います、火蓮ちゃん。」


「うっわー、寝起きの顔ヤバイね。」


「コラっ!月野!……おはようっ、火蓮ちゃん。」


3人の男と1人の女に出迎えられ、私は咄嗟に浅緋くんの背後に隠れた。何と言うか……慣れないのだから仕方ない。


まず、最初に声を掛けてきたのは耳に左右合わせて10個のピアスを付けた強面の美男子。


佐久間 瑠衣 Sakuma Rui くん。能天気な性格の、謂わばムードメーカーだ。


次は礼儀正しく大人な性格の美男子。
結城 夏見 Yuuki Natumi くん。


そして、嫌味で飄々とした一番苦手な美男子。
神矢 月野 Kamiya Tukino くん。


人懐こくて優しいお姉さん的存在の美少女。月野くんの実のお姉さんでもある。
神矢 未来 Kamiya Mirai ちゃん。


この四人はいつも、浅緋くんの家に集まる謎な仲間達だ。