立ち上がろうとしても立てない。

もう立つ気力もなかった。

ーーポタッポタッーー

「ん?雨…」

さっきまであんなに晴れてたのに。

家に帰ろう。

明日また、会えるかな。

希望は捨てなかった。

ただ会いたいという一心で。

立ち上がりどしゃ降りの中

一人トボトボと歩いた。

さっきまでの砂が泥に変わっていく。

ベチャベチャと音を立てながら歩いた。

ふと、下を見るとお気に入りの靴が

もう泥だらけだった。

「なんで、なんで俺だけ…っ」

また涙が…

「風邪引くぞ。」

「え?」

顔を上げるとそこには仁が立っていた。

「じ、仁。」

「お前、泣いてんのか?」

「泣いてないよ、雨だよ。」

と、涙を拭った。

仁は指していた傘を投げ

俺を強く抱きしめた。

「ごめん、ごめんな、和。」

「…っっう…ぐすっ…会いたかった。」

「うん。」

多分だけど仁も泣いてたと思う。

「やっぱり会いたかった。」

「俺の方が会いたかったんだよ!」

「お前、泣き顔ブッサイクだな。」

「うるさい。」

仁が笑うとこっちまで笑っちゃう。

久々に感じる仁の温もり。

温かくて、気持ちいい。

ずっと離れたくないって思った。

「俺、お前が好きだ。」

「俺も仁が好き。」

「両想いだな。」

と言い、二人で顔を見合わせて笑った。

「ヘックション!」

「あ、和の家こっから近い? 」

「うん。」

「早く行こ!」

投げ捨てた傘を手に取り手を繋いで

俺の家まで走った。

「バスタオルは?」

「はい。」

「うわー、いい匂い。」

何言ってんだこいつ。

また二人でお互いの髪を乾かした。

バスタオルでゴシゴシして

ベッドに座った。

「ヤるか?」

「何その言い方。」

と言い笑った。

おでことおでこをくっつけてまた笑った。

「和、キス顔して。」

「嫌だよー。」

「早く〜」

「チュッ」

仁が照れて手で顔を隠した。

「もう、帰さないからな!」

仁に倒されまた笑った。

「つかここ、俺んちだから。」

「あ、そうだった。」

「まずいいや、ヤろ。」

と仁の首に手を回し誘った。

喋ることなく仁は俺の唇にキスをした。

セックス中に何回も言ってくれた。

「好き」「大好き」「愛してる」

俺は全部その言葉を受け入れた。

だって、好きだからね。