華絵の話を、あの声がでかい華絵の話を聞かないなんて…聞こえないなんて。
砂糖の元、恐るべし。

「おいお前ら〜‼︎授業中だぞ‼︎」

ちょっと遅いような気がするけど先生の怒鳴り声が聞こえてきた。

体育は好きだけど、この先生は嫌い。

先生の声にみんなもはっとしてまたバスケを始めた。あたしはやる気がなくなったので見学をすることになった。

ちらっとまた男子コートを見ると、葵が砂糖の元にボールを取られてた。

再度、砂糖の元恐るべし。

砂糖の元、葵からボール取るなんて…
ますます嫌いだ。



------------------------------------------------------

放課後、あたしの機嫌は直らなかった。

「あーまーねー、お願い機嫌直して〜」

机に伏せているあたしの前からそんな声が聞こえる。

「華絵、無理ないだろ。あれはさともとが悪いって。」

「でも、もう帰らないと…」

2人に迷惑かけてる。分かってるけど、でも、嫌だ。楽しいバスケの時間を砂糖の元に邪魔されたのが嫌だった。

「甘音、帰りにチョコ買ってあげるから、な⁇帰ろう⁇」

葵の優しい声が教室に響き渡る。

「やだ、葵、華絵、帰っていいよ」

あたしがそう呟くと、え、と2人の声が重なった。

「でも…甘音大丈夫なの⁇」

「うん」

2人がどんな顔をしてるのかが予想できる。きっと、傷ついた顔。

少しして鞄を持つ音が聞こえた。

「甘音、気をつけて帰ってね。」

華絵の声が聞こえると、2人が教室から出て行く気配がした。しばらくしてからそっと顔を上げる。
誰もいない教室。家にいても、学校にいても、一人ぼっち。

本当は体育の時のことはそこまでじゃない。ただこの事を家で話したいのに相手がいないのがちょっと、ほんのちょっぴり寂しいだけだ。

別に普段は寂しいとは思わない。けど、嫌なことがあるとお母さんに言って、大丈夫だよって安心させてもらいたい。頭を撫でてもらいたい。

あたしはまだまだ、子供だから。