3回ゴールを入れたあたしは飽きたから、華絵にまた代わってもらった。
ちらっと男子の方を見ると葵が綺麗なシュートを決めて居る所だった。
うわーすごいなんて思ってると、後ろから二本の腕が伸びて来てあたしを包み込んだ。
「え」
思わず声が出るけどよく理解ができない。これは世に言う抱きしめられてるというやつなのだろうか。周りの子達が悲鳴をあげて目を真ん丸くしていた。
前に回された腕は長袖の体育着を着ていた。青い。腕を見てると名前と思われる文字が目に入った。
《砂糖元》
砂糖、元。砂糖の元。砂糖。甘い。
やだ。嫌い。
一瞬であたしの中で好き嫌いがはっきりする。
「ちょ、甘音が‼︎さともと離れろ」
「甘音‼︎さともと何してるんのよ⁉︎」
華絵と葵が反対方向からあたしの所まで走って来て、後ろの砂糖の元を引き剥がした。
「あ、抱き枕」
引き剥がされると砂糖の元がそう呟いた。
「甘音、平気⁇」
華絵があたしの顔を覗き込んで心配そうに聞く。
「やだ、砂糖の元、砂糖、甘い、嫌い」
あたしがそう言うと華絵が一瞬目を丸くして、あぁ、と声をこぼした。
葵を見てみれば砂糖の元と思われる人物に説教をしていた。良く見れば砂糖の元、綺麗な顔をしている。でもそんなことは関係ない。
砂糖は嫌い。だから砂糖の元も嫌いだ。
「あーっと、バスケやる⁇」
華絵があたしに聞く。
「やだ。」
あたしが即答すると華絵が唸り出した。
「あぁー‼︎甘音が不機嫌になっちゃったじゃん‼︎さともと〜本当に勘弁…」
「本当に眠いよな」
「話を聞け‼︎」
華絵が砂糖の元まで近づいて言ったのに、砂糖の元はまるで話を聞いていないみたいだ。

