「あ、ほら甘音、ついたから一回しまいな」
葵がそう言って見た方をあたしも見る。そこにはあたしの家があった。あたしは残りのチョコを口の中に放り込んだ。
「いや、口の中にって意味じゃないんだけど…」
苦笑いをする葵と面白そうな笑みを浮かべる華絵。どうやらあたしがしたのは正しい事ではなかったみたいだ。
「じゃあ、また明日ね甘音」
「バイバーイ‼︎」
「うん、バイバイ」
葵と華絵に見送られあたしは家の中に入った。自分の部屋まで来て、窓を覗く。すると葵と華絵が仲良さそうに手をつなぎながら来た道を戻っていた。
お似合いだな…
見ながらそう思った。2人は中学の頃から付き合ってる。あたしの家まで送ると遠回りだけど、その分2人で居る時間が長くなるからいいらしい。あたしにはよく分からない。
それでも仲良しな2人を見ると少し羨ましいと思う。
残ったチョコを食べ終えて着替えた。あたしは早めのお風呂に向かった。
あたしは一人暮らしだ。母親は今、海外で仕事をしていて、父親はあたしが生まれてすぐに事故で亡くなったらしい。
お母さんがあたしを放ったらかしにしてる、なんて言われることがあるけどそんなことはない。
少しでも時間があれば連絡をくれて、もっと時間がある時は家に来てくれる。例えば、一週間休みが取れると必ず日本に帰ってくれる。
綺麗だし、優しいし、仕事熱心。
すごくいいお母さんだし、あたしは大好きだ。

