「甘音、帰りチョコ買おうな」

そんな葵の声と一緒にあたしの頭の上に大きな手が乗る。葵の手だ。こんなふうに撫でられるのが好き。

「買う」

あたしはそう呟き静かに眠りについた。



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「甘音、どれがいい⁇」

帰り道に寄ったお店で葵の優しい声が響く。

「これ、食べる」

あたしはそう言って、カバンからお財布を出した。今日買うのは、新登場のチョコ。

「大丈夫なの〜⁇それ、新しいやつでしょ⁇」

あたしが買うチョコを横から華絵が覗き見る。

「分かんない」

お金を出してそう呟く。チョコを持って、お店を出る。隣を華絵が歩いて、葵が後ろについてくる。いつもの帰り道。この時間が好きだ。

「あ、そういえば明日甘音日直だよ」

ふいに葵の声が後ろから聞こえて振り返った。

「日誌、めんどくさい、やだ…」

「頑張れ、俺も手伝うから」

そう言いながら葵が手を頭に乗せる。やっぱりこれ好きだ。

「やった、葵、好き」

「ははっ、俺も甘音好きだよ」

葵が笑ってあたしも笑う。すると隣の華絵が不機嫌になった。

「葵、好感度アップ狙ってるの⁇」

「いや、そういうんじゃないから」

「またまた〜甘音にはいつも優しいじゃん」

「華絵、ヤキモチやくなよ」

「はぁ⁉︎なんでそうなるのよ…」

あたしは2人の会話についていけないことが分かり、買ったばかりのチョコを食べ始めた。
あ、おいしい。これ好き。

「って甘音、家まで待ちなよ」

華絵が気づいてあたしに呆れた顔を見せた。

「やだ」

はぁ〜とため息が聞こえるけど、気にしない。チョコの方が大事。