みんな病んでる。

ああ、ひとを殴る時って、こんな顔してるんだな。

薄ら笑いの中に、どこかの哀しみ。

改めて殴られる立場になって、解ったことだ。

「リョウ、図体ばかり大きくなりやがってよぉ。中身はヘタレのままか? ああ?」

そんなことを言われても、俺は殴られるままだった。

背はこいつよりずっと大きくなった。

だけど、いじめられていた頃の弱い自分が縮こまっていて、パンチを繰り出すことができない。

殴ったら、倍にして殴り返されるだろう。

だから、黙って殴られてるまあまでいいのだ。

相手の拳が振りかぶった。

……また、殴られる……!!

ばきっ! と、そこで鈍い音がした。

けれど、身体の痛みは感じなかった。

「――!?」