窓際の席で、室内だというのにネイビーブルーの手袋をはめながら、教科書とノートを広げているユウカの視線だった。

彼女がしている手袋は、私が編んだもの。

ユウカも、カラオケに来たいのかな……?

だけど、ユウカはまた視線を教科書に落とした。

何も言ってこないから、私も何も言わなかった。



「ララララ~ラララ♪」

リョウが陶酔気味でラブソングを歌っている。

たかが、カラオケ。

どうしてここまで自分の世界に入れるのだろう、彼は。

私はリモコンを操作し、色々検索をしていた。

どうにもこうにも、曲名に「愛」だの「恋」だのが多いのが目につく。

世の中は、そんな偏狭な言葉が溢れている。

この世で美しいのは、もっと……もっと、他にあるはずなのに……。

――私の耳が、疼いてきた。

「ちょっと、トイレ」

私は自分の鞄をひっつかむと、クラスメイトのたむろする部屋から出て行った。

もっと、美しいものが。

もっと、綺麗なものが……。