「真子は、私が、本読んでるからとかで、セットテラスに行ったの?」

「いや、いや、それは、違う。普通に、あそこのケーキが、おいしいっていう情報を得て」

「ふーん」

「ほんとだよ」

「信じるよ」

「で、これを機に、笹野君に告白すれば?」

「どうして?これを機にって?」

「この本って、女子向けで、挿絵も、甘い感じじゃない?で、香里は、この本で気分、高まってると思うの。そこで、好きな笹野君に、告白したらいいかなって」

「どうして、そうなるの?」

「告白しないの?」

「告白しません!」

「えー」


 告白するとしても、真子には、言わない。

 どうせ、ネタにされるのが、目に見えるから。

 確かに、あの本は、困難を乗り越えてハッピーエンドになったけど。

 確かに、あの挿絵見て、気持ち高まったけど。




 本みたいに、順調にいかないけど、告白しようかな。

 私の困難、みたら、逃げるかな。






 でも、うん。告白しよう。










 私は、返す本を、全部棚に置いて、ドアの近くにいる、真子のほうに踵を返した。