テフィオは18年前の秋、現国王で当時皇子(ディウエス)だったヴェネウェンティウムの嫡男として生を享けた。

まだハイハイもできぬ頃から自分のおもちゃやおしゃぶりを“気”で自在に作り、周囲からはなんて“気”の強い子だと、大いに将来を期待された。

立ち上がれるようになるとすぐに親をまねて見事な“気剣”を創るようになり、次代の皇子(ディウエス)はこの子で間違いないと囁かれた。

“皇子”と書いて“ディウエス”と読む時。

それは世継ぎの皇子であることを意味する。

この国は世襲制を取らない。

すべての学問と武芸に秀でた者を試験で選び、その者が世継ぎの皇子ディウエスとなり、やがて国王となって国を治める。

この国がこれほどの規模を誇りながら国が傾くこともなく何百年もの間平穏に収まってきたのは、このシステムによって選ばれし優秀な国王のおかげだ。

試験は、新王の治世になるとすぐに、我こそはという国中の者を集めて行われる。

8年前、前王が崩御し、テフィオの父ヴェネウェンティウムが即位したとき、その試験が国中を挙げて行われた。

テフィオも皆に大いに期待され、まだ10歳ながらそれに参加した。

帝王学としてあらゆる分野の学問を立派に学んできたテフィオは、学問試験を首席で突破。すでに超人的に卓越した剣の腕前で知られていたテフィオが、武芸試験でも主席となり、ディウエスとなるであろうことは、まず間違いがなかった。