「それもそうだね…。
ところでテフィオ先生、テフィオ先生が皇子って、本当なんだよね?」

「悪いか」

「なんで皇子様が妖精先生になろうと思ったのか、聞いてもいい?」

「…。答える必要がない」

「そっか。いいんだ。妖精先生になりたいって、思ってくれていたならそれで」

「なりたいなんて思っていない!
俺はたったひとつの目的のためにここに来ただけだ」

「目的…?」

目的?

ファイツはその言葉に磁石のようにひきつけられ、その場を動くことができなくなった。

ふう、とテフィオがため息をつくのが聞こえた。

「皇子と知られてしまったからには、お前にはちゃんと言っておいた方がいいのかもな…。
今から話すことは、他言無用だぞ」

「う、うん」

「まずは俺が常にこの木剣を使っている理由から、説明しないとな…。言っておくが、“忌み子”だからじゃないぞ」

“忌み子”。

それは禁忌の存在。

“気”の力を持たぬ者のことを、この国ではそう呼ぶ。

正確には五歳になるまでに気の力を扱えるようにならなかった子供がそう呼ばれ、国によって確実に殺処分される。

この国には気を扱えぬ者など存在しない。戦争で奪った気を持たぬ他国の人間―いわゆる属州民―も存在せず、皆殺しにされるのが常だからだ。

そのことはファイツも知っていたから、テフィオが忌み子だとは思わない。

だが、それではなぜ、木剣を使っているのか?

ファイツの疑問に答えるように、テフィオは語りはじめた。

自らの身の内を。