テフィオはすっと背筋を伸ばし、鷹揚な発音で厳かに告げた。

「私はテフィオリウス・ジュピ・ファゼルナード。
このジュピテリオスの第二皇子である。
陛下の命で人身売買について調べている。
すでに近衛たちが警察を動かしている。証拠もつかんだ。逃げられると思うな。
全員、捕えよ!」

近衛たちは言われずともすでにバリバウス一味を次々と捕縛していた。近衛として戦闘訓練を受けてきた彼らと、ならずものの集まりであるバリバウスたちとでは、実力の差がありすぎたのだ。

しかし、統領たるバリバウスだけが、仲間たちを置き去りに我先にと逃げ出し姿をくらましていた。

「紫の身分証…皇子…って、テフィオ先生が…?」

シルフィとファイツはあまりの驚きに固まったまま動けない。

しかし近衛の一人が跪き、「皇子様」と声をかけているからには、本物としか思えない。

王族の近衛。

闇に溶け込む漆黒の衣をまとう、凄腕の集まりだと、無論、シルフィとて聞いたことがあったが、まさか…。

「囚われている人々を救出せよ」

「かしこまりました」

はきはきとした発声で命ずるテフィオの横顔を、シルフィとファイツは別人を見るような目で見るしかなかった。

かくしてテフィオリウス皇子と近衛たちによる大捕り物のすえ、人身売買組織は壊滅したのだった…。

しかし、やはりバリバウスの筆跡と思われた巻物はでたらめの数値が書かれた偽物であった。アジトで身柄を拘束することもできなかったので、バリバウスだけは難を逃れることとなってしまったのであった。

まだまだ、バリバウスとの戦いは続きそうだった。