すると。

周囲でたくさんの黒い影が蠢いた。

いや、そう見えただけで、開け放たれた扉からするりと、何者かの集団が侵入してきてテフィオたちを取り囲んだ。

漆黒の衣をまとった人だ。そう理解するのが遅れる程、謎の彼らは影そのもののように闇に溶け込んでいた。

「誰!? この人たち!」

シルフィが焦って声を上げるのも無理はない。敵だとすれば致命的だからだ。しかし、テフィオは落ち着いた声音で返した。

「 “奴ら”―――俺の近衛たちだ」

「近衛…? は…?」

バリバウスがシルフィから剣を引いたのがわかる。影たちがその手に気剣をつくり、バリバウスたちに向けて繰り出したからだ。

影たちとバリバウスたちとで激しい攻防が始まった。

シルフィは思う。味方、なのか? と。

テフィオはゆっくりとした動作で懐から何かを取り出し、堂々と掲げて見せた。

それは身分証だった。農民以上の身分ならば、ジュピテリオスの誰もが持っているメダル。メダルの色で身分を示す。

―え?

シルフィは我が目を疑った。

テフィオがかざすメダルは、平民の黄色でも騎士の青でも貴族の赤でもなく、紫色。

紫色は――