こんなことをやりそうな人物に、心当たりがあったからだ。

いや、こんなことをやる奴など、一人しかいないに違いない!

ファイツが自室に帰り着くと、そこには手紙が置いてあった。

『誕生日おめでとう! ファイツ。
この苔は、ささやかながらあたしたちからの誕生日プレゼントです
                        シルフィ プチ シャドウより』

「………!!」

誕生日。

そんな日のことは、とうの昔に忘れていた。

それを…シルフィたちは…。

“見せたいもの”とは、ひょっとしてこれのこと、だったのだろうか。

ファイツの脳裏をあたたかな記憶がかすめていく。

まだ何も知らず、秘密の広場で暮らしていたころの誕生日の記憶だ。

母は花を編んで花冠をプレゼントしてくれた。

こんなものしかあげられなくてごめんねと、母はすまなそうにしていた。けれどファイツは嬉しかった。嬉しかったのだ…。

手紙を持つファイツの手が震えた。

そして、何か言おうと自分が我知らず口を動かしていたことに気が付く。

何を言おうとしたのかは、わからずに…。