『ねえ、街を見に行きたくない?』

『別に…』

『まあまあそう言わずにさ』

シルフィがファイツを抱き上げたので、ファイツは猛然と暴れた。

しかし、そんなファイツに、シルフィの肩の上にいたプチが話しかけた。

『街は面白いところだよ? ファイツくん、一緒に行こうよ』

するとファイツは、急にぴたりと大人しくなった。

そのおかげでシルフィは、事前に持ち込んでいた大きな肩下げ鞄にすっぽりとファイツを収めることができた。

『ボクも入ってみたいなぁ』

などと言いながら、プチまでファイツの隣に収まると、乙女心をくすぐる可愛らしい眺めとなった。

「何このセット! 可愛い♪」

無言で控えていたシャドウがもぞもぞと動いて鞄を鼻にのせたがったので、相当かわいいといったところだろう。

寮からファイツを連れ出すことに成功したシルフィたちは、そのまままっすぐ校門へと向かったが、途中ばったりテフィオと出くわしてしまった。

テフィオが官舎から、遅い朝食をとりに食堂に行こうとしていたのだろうところを鉢合わせてしまった形だ。

テフィオはしばらく眉間にしわを寄せてシルフィたちを眺めていたが、素晴らしい勘を働かせておもむろに鞄に手を伸ばした。

「おい、何か怪しいな、そのかばんの中身を見せろ」

「え! ええっと…」

シルフィは逃げようとしたが、一歩遅かった。

鞄のふたをめくりあげたテフィオに眉間の皺が何本も増えたことは…言うまでもないだろう。