ファイツが激しい怒りのままに一際大きく息を吸い込んだ時、今までと違う感覚が生まれた。

体の奥がくすぶる感覚。

すると―――――

ぼっと炎が噴き出し、テフィオの木剣を焦がしたではないか!

小さい炎ではあった。

しかし、ちゃんと炎と呼べるものが出たのは、今までにないことであった。

ファイツが呆然としていると、テフィオが思わずといったかんじで言った。

「よくやった! やればできるじゃないか!」

そして彼はふっとわずかに、微笑んだ。

その笑顔が一瞬、父と重なり―

ファイツはすぐにそのありえない想像を振り払う。

妖精先生なんかを父と重ねるなど、あってはならないことだ。

一方すべてを遠巻きに見ていたシルフィは…

じんわりと胸があたたかくなる感覚に、我知らず口元をほころばせていた。

「わざとだよ…」

『え?』

「テフィオ先生は、わざと暴言を吐いていたんだよ。ファイツに力をつけるために…」

こんな時間に妖精を寮に戻さないでいるなど、校則違反に違いない。それをしてまで、わざと暴言を吐いて、テフィオはファイツを特訓してくれていた…。

やはり、テフィオは―

「…優しい人だね」

なぜか、涙が浮かびそうだった。

そして、もっと見ていたいと思った。

もっと知りたいと思った。

もっと…。