絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~

「おやめください、お願いします。愛玩奴隷は、すぐに飽きては捨てられる、あまりにもひどい待遇。どうか…」

「うるさい!!」

役人はいらだった声をあげると、突然腕をかざして外側に振り抜いた。

初めて間近で見る“気剣”。

それへの驚きよりも、ファイツはそれが父の体を貫いていることに驚いた。

どういうからくりになっているのか。

あんなもので串刺しにしたら、父は死んでしまうだろうに。

「え……? 父様…?」

気剣が引き抜かれ、鮮血を飛び散らせながら、父がどう、と地面に倒れる。

その様を、その一部始終を、ファイツは信じられない気持ちでみつめていた。

「ふん、繁殖奴隷の分際で、私に対等な口をきくからこうなるのだ。思い知れ。この妖精はいただいていくぞ…痛っ」

「その子は、その子は、死んでも渡しません!!」

母が役人の足に噛みついていた。

そして悪夢のような出来事が起こった。

役人は目つきを鋭くすると、母までもを、容赦なくその剣で貫いたのだ。

「母様!?」

ファイツは、目の前で両親を惨殺された。

けれどまだ、まだファイツは何もわかっていなかった。

「ファイツ…逃げ……広場、へ…」

ファイツは母の最期の言葉の意味だけをしっかりと読み取り、その場を駆けだした。