バリバウスがちっと舌打ちする。

「ふん、ちょっとは法を知っているではないか。
まあよい、お前のような小娘など、ハエにも劣る。無視するに限るわ。
ハーハッハッハッ」

解雇の危機は免れたものの、それ以上の追及はできなくなってしまい、シルフィは一度退室するしかなかった。

「ありがとう、プチ、シャドウ。危ないところだったよ」

『でも…寮の改善は結局してくれないんだよね』

『………』

三人を包む空気はどんよりと重い。

シルフィは気持ちを切り替えようと明るい声を出した。

「でもきっと、気の中毒から治りさえすれば、妖精たちももっとよい待遇を要求できるはずだよ。それには試食が大事! みんな、食べてくれたかな?」

『明日、朝一番で見に行ってみようか』

――――しかし。

翌朝見に行っても、試食を食べた形跡はまったくなかった。

夕方再度見に行くと、試食は腐り、ゴミの山と化して、寮内の異臭をさらに悪化させていた。

しかも、シルフィたちの活動に気づいたバリバウスにより、新たな校則が施行されることとなった。

“給食以外の食事を妖精たちに与えてはならない。
この校則を破れば、ただちに減給、最短日時にて解雇とする。
また、受け取った妖精にも食事抜きの罰を与える”

最後の一行がシルフィに大きな打撃をもたらした。

「妖精たちまで罰せられるなんて、これじゃあもう試食を食べさせてあげることができなくなっちゃう…」

計画が振り出しに戻ったのだ。