寮訪問計画を控えたその日の昼食時。

職員の食堂で、シルフィはテフィオを発見した。

どこもかしこも金ぴかの、シルフィに言わせれば趣味の悪い食堂の中でひとり、彼はいかにもジュピテリオス風の食事を食べていた。

前菜のオリーブの実。メインディッシュはガルム(魚、塩、香辛料でつくられたソース)や月桂樹で味付けされた、牛肉のソテーに、キャビアとゆでたアスパラガスが添えられたもの。サラダは色とりどりの野菜とウズラの卵。そしてデザートは“気”の花のコンポートだ。

妖精だけでなく、人間も“気”を食べる。特にこの気の花は、どれだけ美しく作れるかが女性のステータスとなっている。気の力を持つ人間は、気を食べてもなんら中毒症状を引き起こすようなことはないのだった。

「テフィオ先生、一緒に食べよう!」

シルフィが空いていた隣の席につくと、テフィオはあからさまに嫌そうな顔をした。

しかもシルフィが持参した弁当を広げ始めたので、彼の眉間の皺の数は激増した。

シルフィが迷いの森で育てている、とれたて野菜にゆで卵、牛乳たっぷりのシチュー。

質素な昼食は、豪華であたりまえのこの学校にあって、かなりの異色であった。

「今朝はどうして試食を捨てたりしたの? 絆を育て、守る、妖精先生なのに!」

口いっぱいに食べ物を頬張りながらもごもごと語りかけるシルフィに、テフィオはもううんざりといった表情で応じる。