「は~い皆さ~ん! おいしい食事ですよ~! これを食べ続ければ、気の中毒から回復できる魔法の食べ物! さ、遠慮なく」

『僕もお手伝いしたよ! みんな、食べてね』

「おいお前たち、何をやってる」

朝の登校時、シルフィとプチとシャドウが玄関口で妖精たちに試食を配っていると、テフィオがいつにもまして不機嫌そうな顔で現れた。テフィオは最近、授業中でもそれ以外でも、プチやシャドウを追い出したりせずに黙認するようになっていた。

「何って。試食を配ってるの! みんな、食べてくれるといいんだけど」

「そんな勝手が教師に許されると思うのか」

「許してもらうしかないなぁ~」

「許さない! やめさせるぞ」

「ああっ」

テフィオはシルフィたちの手から試食をもぎとり、すべてゴミ箱に捨ててしまった。

「ひどいよ。テフィオ先生は妖精を助けたくないの?」

「助ける?」

は、とテフィオは鼻で笑った。

「いいか、お前たちのやっているそれは、ただの自己満足だ。
ここには2000匹の妖精がいる。お前たちはその試食を2000匹分、用意できるのか?
ましてや、仮に気から自由になれた妖精がいたとして、彼らの生きる道はどこにある?
忘れたのか、逃亡奴隷は処分されるんだぞ。
その魔の手から、どうやって逃がすつもりだ?
エゴなんだよ、お前たちのやっていることは」

言うだけ言うと、テフィオはふんと鼻を鳴らして行ってしまった。

「…………」

残されたシルフィを、心配そうにプチとシャドウが見守る。

さすがに傷ついたかな、と彼らは思ったのだが…。

「そんなこと言ったって、やれることからやっていかなきゃ世界は変わらないよ! テフィオ先生のばか! よ~し、夕方は妖精たちの寮の方まで行ってみよう!」

やはりこのシルフィ、めげてはいなかった。